伝わる!きれい!マンションの「読んでもらえる掲示物」の作成と活用のコツ
マンションにおける掲示板は、理事会や管理組合、管理会社、地域自治会などと住民をつなぐ、重要なコミュニケーションツールです。しかしその掲示方法によっては、重要な情報が充分に伝わらないばかりでなく、マンションの美観を損ねるという、マイナスの方向に作用することもあります。そこで今回は、プロのグラフィックデザイナーの観点から、「伝わりやすく」「美しい」マンション掲示板の活用法について考えてみたいと思います。
●掲示物作成の基本
掲示板で告知する「掲示物」は、A4サイズもしくはB5サイズという限られた紙面の中で、必要な情報を収めなければなりません。しかも老若男女、誰にとっても見やすく、伝わりやすく、瞬時に内容を把握できるデザインに仕上げることが求められます。
そこで大切なのは、第一に「情報量」。とかく「あれも、これも伝えなきゃ」と思い、紙面全体に文字を詰め込みたくなるところですが、遠目から見て文字色の黒で塗りつぶされているような掲示物は、特に時間がないときにはあまり注目したいとは思わないものです。
プロのデザイナーと、そうではない人が手がける掲示物の大きな違いは「余白の使い方」。プロは余白も含めてデザインと考える一方、多くの場合、余白を「空きスペース」と考えて、そこを不要な情報や飾りで埋めてしまいがちです。
掲示物に載せる情報は、できる限り精査した上で最低限の量に留めること。それにより余白ができることを恐れず、むしろスッキリとしたデザインに仕上げるために、意識的に設けるようにしましょう。
また掲示物は、手にとってじっくりと読ませるものではないので、一瞬でどんな内容なのかを伝える「視認性」が重要です。人は情報を得ようとするとき、それが「自分に関係しているものなのか、そうではないのか」を最初に判断したがる傾向があります。その結果、自分には関係がないと判断した場合、あるいはそれがすぐに判断できない場合には、すぐに興味を失ってしまいます。
そこで役に立つのが、文字よりも視認性の高い表現方法。つまり写真やイラストです。たくさんのスペースを文字で埋めるより、内容に関係する写真やイラストを1点配置する方が瞬間的な視認性は高まります。
掲示物では、「色」も重要な要素。もちろん白黒よりもカラーの方がきれいで華やかな印象にはなりますが、配色のバランスはとても難しく、色を使いすぎると紙面の統一感がなくなってしまいます。基本的には文字色の黒の他に1色メインとなるカラーを決めて、その濃淡で色付けしていくのが無難。本当に目立たせたい箇所のみ、メインカラーとは異なる色を使うと効果的です。
同じような意味合いで、使用するフォント(書体)も多すぎると統一感がなくなり、スタイリッシュさが失われます。フォントも本文に使うメインのもの、タイトル用のものと2種類程度に抑えておくとよいでしょう。フォントの飾り付け(袋文字や影文字等)のしすぎも、読みやすさの面で逆効果になるので、注意が必要です。
<掲示物制作の基本を抑えよう!>
余白を恐れず、むしろ意図的につくる!
視認性を高める写真やイラストを入れる!
色は文字色の黒プラス1色程度に抑える!
フォントや飾り文字の多用をしない!
●掲示物作成の手順
では、このような基本を踏まえて、実際にマンションの掲示物をつくる手順を説明していきましょう。
まずは、載せるべき情報の整理から始めます。伝えるべき情報を1枚の紙にまとめるにあたり
どの表現方法が一番伝わるか?
どうすれば簡潔に表現できるか?
一番強調すべきはどの内容か?
を考えていきます。
内容を「タイトル」「リード文(内容をまとめた2、3行の序文)」「本文」「詳細」「フッダー(問い合わせ先、情報の発信元、関連ホームページのURLやQRコードなど)」に分け、整理してみてください。その際、なるべく簡潔にまとめるため、リード文と本文で重複する部分はないか(リード文だけで伝わるのであれば、本文全部が不要になることも)、写真やイラストを見ればわかることを丁寧に説明しすぎていないかなどをチェックし、情報をそぎ落としていきます。
文章が固まったら、写真、イラストなどビジュアルの選定に移ります。この段階ではどれくらいビジュアルに割けるスペースが確保できるかわからないので、テーマに合ったものを3種類ほど選んで保存しておきましょう。
以下のような無料でダウンロードできる、著作権フリーの写真やイラスト提供サイトもあります。
イラスト
写真
文章、ビジュアルといった素材が揃ったら、レイアウト作業に移ります。
まずはザックリと
タイトル
リード文
本文
詳細
フッター
という順に、紙面上に置いてみてください。
そのうえで次のように、レイアウトのバランスを整えていきます。
タイトルの文字サイズを大きくする
行間を見やすい程度に空ける
文字列(天地/左右)を揃える
読みやすくなるように、本文に改行を入れる
強調したい部分を四角で囲んだり、大きくする
これで基本のレイアウトは見えてくると思います。
次に空きスペースを考慮し、それに合った写真やイラストを置いてみましょう。結構余裕があるのなら、大きく使っても見栄えのするものを。あまりスペースがないのなら、一部分を切り取っても伝わるものを選んでください。余白を埋めてしまわないように、文章との間隔を最低5mm程度は離すのがポイントです。
最後に色や飾りをつける作業をします。色については一枚の掲示物だけの配色ではなく、掲示板全体のことも考えたカラーリングをしてみましょう。
例えば…
管理組合から、管理会社から、自治会から…というように、発信元で色分けする
サークルやボランティアなどの募集、防災訓練などイベントの案内…というように、内容で色分けする
防犯、感染症予防の注意喚起、長期的な案内…というように、情報の緊急性で色分けする
という具合です。これにより掲示板が煩雑になり、大事な情報が埋もれてしまう危険性を回避することができます。
文字色を変えるのではなく、タイトルの背面やヘッダー部分に帯を敷いたり、色のついた罫線で囲むなどをしてカラーリングしていきます。文字を着色するのは、重要な部分を強調するためだけに留めておいた方がいいでしょう。
最終的に文字の校正や改行などによるバランス調整、色の濃淡の調整など、細かな仕上げをして完成です。
●掲示板を目立たせるひと工夫
掲示物ができたら、管理組合による承認など所定の手順を経て掲示板に貼り出すことになりますが、その際にもうひと工夫を施すことで、掲示板をさらに有効に活用することができます。
1 POPの活用
重要な掲示物の存在を際立たせる方法として、POPの活用があります。POPとはスーパーマーケットで売られる特売品や、書店に並ぶ注目の本などに貼られる小さな販促ツールのことです。吹き出しや矢印でお客さんに気づかせ、短いコメントで購買欲を高める役割を果たしています。
このようなPOPを用意し、特に目立たせたい掲示物の脇に貼っておくことで、掲示板の近くを通る住民の注意を惹きつけることができます。パウチなどで加工しておけば、繰り返し使うことも可能。用意しておいて損はないツールです。
※この記事の最後に、すぐに使えるPOPのPDFデータを用意しました。プリントアウトしてご活用ください。
2 掲示の期間
イベントの告知、マンション内の委員会やボランティアの募集等には、情報の有効期間があります。告知や募集のタイミングが早すぎると住民の興味を引くことができません。反対に募集の期限や開催日が過ぎているものについては、貼り続けていても意味がありません。
例えば、募集やイベント開催の1ヶ月前から貼り出しを開始。終了後には速やかに剥がすというルールをつくり、徹底することが大切です。
3 掲示の位置
掲示物の内容を考えず、無秩序に貼ってしまっては、掲示板に混乱を招いてしまいます。伝えるべき情報が伝わらず、見栄えも悪くなるでしょう。
それを避けるため、掲示板をゾーン分けし、内容によって貼る位置を決めるといった工夫をしてみてはどうでしょうか。例えば左側は管理組合からの重要なお知らせ、右側はイベント開催情報などという具合です。
また、警察や消防からの注意喚起、規約の改正、役員の改選など、全ての住民に必ず目を通してもらいたい掲示物については、エレベータ内やエントランスといった、多くの住民が利用する共用部に貼るなど、掲示する場所にも気を配る必要があります。
●今スグ使える!掲示物作成用テンプレート
これまで紹介してきたポイントを踏まえて、マンションオリジナルの掲示物をつくってみるのもいいですが、「なかなかその時間がない…」という役員さんのために、プロのデザイナーが作った「すぐに使えるマンション掲示物テンプレート」をパワーポイントで用意しました。
掲示板のイメージに合わせて、内容に合わせて、使い分けることが可能。文章と写真を替えるだけで、おしゃれな掲示物が完成します。ぜひご活用ください!
すぐに使えるマンション掲示物テンプレート
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掲示物に添えたい POPデータ
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