その防災備蓄品じゃ足りないかも!? ~チャレンジしてわかった、本当に必要な備え~
時間や場所を選ばずに、突然やってくる災害。
学校や自治体などでは防災訓練が定期的に行われていますが、自宅で訓練はほとんどしませんよね?もしも子供が自宅にいる時に大きな地震がきたら……。不安でたまりません。
では、子どもがいる家庭で必要な備えとは、どのようなものなのでしょうか?夏休み直前、子どもが小学校から、賞味期限まで1か月を切った非常食セットを持って帰ってきた際、災害を想定して、自宅で防災備蓄品を使って過ごしたご家族がいると聞き、その様子を取材してきました。
※本記事は2016年9月に作成したものです。
自宅マンションでライフラインがストップした!と想定
Nさんは東京都区部の築17年の5階建てマンションの最上階に、夫婦、小学3年生の娘と幼稚園年少の息子の4人で住んでいます。
東日本大震災の時に、東京で震度5の地震を経験し、恐怖心を覚えました。その時から子どもには、災害時にできるだけ自分で考え、身を守れるようになってほしいと思うようになりました。
今回Nさんは、自宅マンション内で10時に地震が発生し、ライフラインがストップしたと想定し、1日を過ごしました。
(設定した条件)
●電気・ガス・水道は使わない。
●昼食と夕食は非常食を食べる。おやつはなし。
●防災バッグの中のもので過ごす。
防災バッグは、子どもが出せる玄関横のクローゼットに収納し、備蓄品も用意して日ごろから災害には備えていたつもりでしたが、実際にやってみるとさまざまな問題が出てきました。
実際に使ってわかった「不十分さ」
① 備蓄品不足
・備えていた非常食の量では足りませんでした。
・非常食を発熱剤の入った袋で温めたら、高温で容器のままでは食べられませんでした。
・取り皿がなく、食べるのに苦労しました。
② あかり不足
・手動式懐中電灯は、ボタンをカチカチと連続して押すことで点灯する仕組み。操作で片手がふさがってしまうので、作業中の使用には不向きでした。
・アロマキャンドルは、炎が小さく、明るさが不十分でした。
③ 不便な「トイレ」
簡易トイレは、ペットのトイレシートのようなタイプを用意していましたが、夏場で臭いが気になって使わず、通常のトイレで、お風呂の残り湯を使って流すことにしました。残り湯を洗面器で運ぶ途中でこぼしたり、流し入れる勢いが足りず、1回で流れなかったりと苦戦しました。
④ 持て余す「時間」
災害時、マンションの住民は、基本的に自宅待機となっていますが、今回の訓練では、避難所生活も想定して、
・限られた空間
・本を除く全てのおもちゃを使用禁止
にしました。結果、日頃、走り回ったり、おもちゃを部屋全体に広げて遊んだりと元気いっぱいの幼稚園児の息子は、テレビもない時間を持て余していました。
なんとなく揃えていた物や考えていたことが、実際やってみると「こんなにも不都合があるのだなぁ」とNさんたちは感じました。
チャレンジしてわかった、災害時に必要な「そなえ」
マンションは戸建てと異なり、収納も少なく備蓄できる物の量が限られます。家庭に合った適切なものを備えることが重要です。今回やってみて、Nさん家族は備蓄品を見直しました。
Nさんのテラスには、避難はしごが設置されていません。近くの避難はしごは隣戸のテラスにあるので、仮に、自宅で火災が発生して玄関から逃げられない場合などは、隣戸との仕切りを蹴破らなくてはいけません。災害時には助け合いが必要ですから、日頃からあいさつを交わし、住民同士が「顔見知り」になっておくことも大切ですね。
ちなみに、こちらのマンションは、通常でも使える階段が避難路になっています。子どもたちは、時々階段を使っているとか。日常的に利用すると、いざという時にちゅうちょなく使えそうですね。
また、災害時は学校に避難することも検討しています。子どもたちは他の子どもといる方がリフレッシュできますし、情報が入りやすいというメリットもあるからです。
子どもたちに訓練の感想を聞くと「トイレが大変だった」「おなか空いた」「暇だった」と不満が次々と……。
しかし、最後にNさんの娘が一言。
「でも、本当に地震がきたら我慢しなくちゃいけないから、練習したんだよね。それに、いっぱい買わなきゃいけない物があるってわかって良かったよね。やってみないとわからないね」
いつ起こるかわからない災害。備蓄品を“実際に使ってみる”ことが、一番の「備え」になりそうです。
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