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マンション同士が協力し、ユニークでタメになる「炊き出しフェス」を開催!

防災イベントのマンネリ化や住民の関心の低さに悩むマンションは多いはず。「やらねばならない」と考えるとむずかしいけれど、主催者も参加者も「やりたい!」「参加したい!」という楽しみになれば違ってきそうですよね。さらに、ひとつのマンションだけでなく、複数のマンションで一緒にイベントができたら?
今回はそんな楽しい防災イベント、タイトルもずばり「音楽フェス」ならぬ「炊き出しフェス」をご紹介します。
 
※本記事は、2016年に取材・制作したものです。


3つのマンションで集まり、防災力をUP!

「パークシティ溝の口」のピロティで行われた「炊き出しフェス」。地域の誰もが参加できます。

東急田園都市線「溝の口」駅近く、川崎市高津区久本エリアにある緑豊かな大規模マンション「パークシティ溝の口」のピロティスペースで行われた防災イベント「炊き出しフェス」。同じエリアにある3つの大規模マンション「パークシティ溝の口(築34年・1,103戸)」「メイフェアパークス溝の口(築16年・548戸)」「タワー&パークス(築10年・648戸)」による合同主催の防災イベントです。
 
近隣のマンション同士や町内会と連携して、地域全体の防災対策や勉強会を行う動きが活発化しています。ひとつのマンションの力だけではできないことも、他のマンションや町内会と一緒に力を合わせれば、実現できることも増えてきます。
“3本の矢”が集まれば強く折れないというたとえ話がありますが、おなじ地域にあるこれら3つのマンションが協力することで、防災力もさらに高まるに違いありません。実際、3つのマンションや町内会は、ふだんから、マンションイベントのための道具などを貸し借りするなどの交流があり、地域全体がいいかたちでつながっています。

今回の「炊き出しフェス」を呼びかけた、パークシティ溝の口の民生委員 山本美賢さんにお話を
うかがいいました。金髪の民生委員さんって、管理組合に新風を巻き起こしそうでいいですね! 

山本さん「そもそも自分が理事になるなんて思ってもいなかったのですが、たまたま2011年に管理組合の理事に選ばれてしまって(笑)。その時選ばれた理事たちが、さまざまな職種の40〜50代の同世代だったこともあり、それぞれの得意な分野でマンションのコミュニティづくりに積極的に関わっていくようになりました。その中で、保育園や小学校のPTA活動を通じて、同じ地域の2つの大規模マンションとも連携して合同イベントを開催したり、互いに情報共有をしたりするようになっていきました」
 
それぞれのマンションは築年数も異なり、「パークシティ溝の口」は60代以上が中心で住民の高齢化が進んでいる分、長期修繕や管理などのマンションについての知識と経験を豊富に持っています。20〜30代が多い「タワー&パークス」、30〜40代が多い「メイフェアパークス」と、それぞれのマンションが互いに協力し合うことで、今回のように多世代が参加する「防災フェス」が実現しました。
 
3つのマンションの連携については、以下の記事もご覧ください。

『FUN!TAKIDASHI!』『乙女の豚汁』などユニークなブースで参加者の興味をUP!

山本さん「3つのマンションの合同開催イベントは、2月の餅つきイベントに次いで、これで2度目。今回は楽しい交流だけでなく、地域の防災知識の共有や防災備蓄品の活用といった訓練的な意味合いも兼ねて防災ベントを企画しました。ただ、マンション主催の防災イベントと銘打つと、“皆さん参加お願いします!防災訓練は義務です!”というようなイメージがあってどうして堅苦しくなってしまいます。楽しみながら気軽にやりたいということもあって、『炊き出しフェス FUN! TAKIDASHI!』というタイトルにして、夏の音楽フェスみたいにゆるく楽しく企画しました」
 
音楽フェスっぽい防災ベントというコンセプトが新しくていいですね。
3つのマンション住民による炊き出しも、「乙女の豚汁」「下衆のイカ焼き」「親父のアルファ米チャーハン」「親父の流しソーメン」という楽しいネーミング。しかも楽しいだけでなく、これは炊き出し用の防災用品や防災備蓄品の訓練にもなっているのです。

老いも若きも麺つゆ片手に集まる「親父の流しソーメン」(メイフェアパークス青年部)。
流しソーメン道具は、地域のイベントで貸し借りをする人気の道具です。
裏方でソーメンを茹でるスタッフ。PTAつながりもあって「親父」達が裏方で大活躍。
非常用発電機、燃料、炊き出しのすべてが防災訓練につながっています。 
「パークシティ溝の口」のぱーく乙女27による「乙女の豚汁」。
皆さん、大釜での豚汁炊き出しをがんばってらっしゃいました。

いいアイデアはもらっちゃえ!防災力がハンパないマンションから学んだ『下衆のイカ焼き』


最強クラスの防災力を誇る加古川グリーンシティ仕込みのイカ焼きブース。「1分30秒で2人前、30分で40人分の食をまかなえる」炊き出し食です。お父さんたちが奮闘していますよ!

山本さんたち有志は、防災でも何でも、見ならうべき取り組みを実践している先輩マンションを見つけたらどんどんそのマンションに教えを乞いに出かけていきます。
その成果は、「下衆のイカ焼き」です! 多彩な防災活動を行っている兵庫県の「加古川グリーンハイツ」で学んできた、「被災時には、一家に1袋ある小麦粉を持ち寄ってできるイカ焼き」を実践しています。

段ボールジオラマで、地域の被害をシミュレーション。災害をリアルにイメージする大切さ

減災アトリエ主宰の鈴木光さんがワークショップを担当。子ども達は、地図に広域避難所や浸水予想区域を書き入れていきます。自分でなぞっていくことで、被害予想が自分ゴト化するのですね。
「ここがこうなるの?」地図と照合しながら、みんな真剣に取り組みます。
段ボールを重ねてジオラマ地図づくり。高低差がわかることで、
豪雨災害の浸水予想エリアがさらにイメージしやすくなります。
みんな夢中で参加しています。楽しみながら学べるというのが、本当に素晴らしいです。

今回の防災ワークショップでは、段ボールジオラマ作りを行い、出来上がった段ボールジオラマを使ってDIGと呼ばれる災害図上訓練を行いました。DIG とは、Disaster(災害)、Imagination(想像力)、Game(ゲーム)の略。地図を使って災害発生を想定し、地図に書き込んでいくもの。
一般社団法人防災ジオラマ推進ネットワークが制作した段ボールジオラマキットを、子ども達が組み立てて、減災アトリエ主宰の鈴木光さんが、子ども達のワークショップを担当しました。自分達が済んでいる場所の地図を立体化し、起こりうる災害を想定して、どう行動するかを学ぶワークショップは、夏休みの子ども達にとっても、傍で見守っていた保護者にとっても、身近な防災の気付きになったようです。

各マンションの防災マニュアルや災害台帳名簿の展示コーナー。
こうして、住民一人ひとりが防災に関心を持ってくれることが、イベントの大きな役割ですね。
「ローリングストック料理教室」は、家庭のストック食材、ツナ缶やトマト缶を使って、
水と燃料を節約しながらできる時短調理の紹介。
「アルファ米おにぎり熊本風」。住民の一人が、熊本地震の避難所で配付されていた
「ビニール袋で握るアルファ米のおにぎり」を真似て実演。衛生的で便利ですよね。
今回はいろいろなふりかけを用意しました。住民一人ひとりの防災知識が、
こうやって皆に伝播していくのがいいですね。
スタッフの皆さんの歓談の様子をパチリ。手応えのある防災イベントだったに違いありません。「炊き出しフェス」は、さらに他の地域やマンションにも広がって行くに違いありません。

最初はPTAやママ友などの住民と住民のつながりが、マンションとマンションのつながりへ発展し、そして地域全体のつながりへと発展していった3つのマンション。集住のタテ型マンションが、ヨコにつながっていくと、防災だけに限らずいろいろな可能性を秘めているのだなと感じた「炊き出しフェス」でした。
何より、防災ってこんなにも楽しいコミュニティベントになるのだなということが実感できました!
皆さんのマンションでも、防災イベントの参考にしてみてはいかがでしょうか? 

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