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ブラウシア管理組合法人に学ぶ—広報活動でつなぐ!広がる!コロナ禍のマンションコミュニティづくり

2年近くに及ぶコロナ禍の影響で、理事会の休止・延期、夏祭りや敬老会などのコミュニティイベントや交流会が休止中になり、住民間の結束が薄まったと懸念されているマンションも多いはず。そんな中で、千葉市のマンション・ブラウシアでは、マンション内コミュニティを住民に再認識してもらうため、理事会広報グループが中心になって住民向け広報誌を充実させる取組をしています。また、大学生の卒業論文の研究対象になるなど、このコロナ禍においても外部交流につながる新たな取組にチャレンジしています。

※写真提供/ブラウシア管理組合法人
※この記事は、2021年10月に取材したものです。


●コロナ禍で広報誌を充実させることに!

ブラウシアの広報グループは、理事5名によって構成されています。
左から、桑野さん、菅原さん、リーダーの井上さん、高橋さん、時田さん

千葉市のブラウシアは、メディアでも取り上げられるほど、コミュニティ活動が活発なマンションです。マンション・ラボでも、これまでにさまざまな活動を紹介してきました。

しかし新型コロナウイルス感染症拡大により、予定していたイベントを次々休止せざるを得なくなったとき、新納理事長(第16期)から、従来から毎月発行してきた広報誌「Blausea NEWS」を活性化したいという意見が出されました。

新納理事長。理事になって3年目。
今期より理事長として、コロナ禍においても活発な管理組合活動を維持するため、本広報誌活性化以外にリモート理事会等を主導されています。

新納理事長
今期(第16期)は、コロナ禍の真っ最中という厳しい状況でスタートしました。夏祭り、クリスマス等従来のイベントは感染予防の観点から、残念ながら中止にしました。住民の皆さんも、緊急事態宣言で外出を控えられており、孤立が進んでいるように感じました。そこで、理事会としてはマンション内のつながりを維持、促進すべく、「ワンチーム Blausea〜アフターコロナの下でのコミュニティ生成〜」をテーマに活動していくことにしました。その中で、16年間毎月発行し続けてきたマンション内広報誌「Blausea NEWS」を充実化させていくことにより、住民の皆さんにブラウシアの一員としての安心感、温かさを感じてもらえるのではないかと考えました。

●どんな広報誌?内容充実!

2021年4月号の「Blausea NEWS」は、なんと24ページ!
住民向けの貸出備品の紹介から理事会・管理会社が協力して調査したエコキュート交換実績等住民が気になる記事がてんこ盛りで読み応えたっぷりです。(画像提供/ブラウシア管理組合法人)

広報誌「Blausea NEWS」は、広報委員会が取材・編集・執筆・レイアウトまでを行っています。ちょっとその内容の一部を抜粋すると…。

・自販機で売れている飲みものランキング
・母の日・父の日似顔絵募集
・ブラウシア川柳
・ベスト・オブ・スーパーマーケット
・ブラウシアNo1携帯キャリア
・わが家のペット自慢
・あなたの知らない自治会
・フロント担当紹介
・ディスポーザーの使用について
・ブラウシアフロント販売人気パンランキング
・ブラウシアサークル訪問
・管理員さんの一日
・駐車場区画交換者募集
・釣りのお勧め
・修繕委員会、大規模修繕奮闘記
・今月のブラウシアBOOKS紹介(BOOKコーナーのオススメ本)
・バルコニーの利用マナー
・防災用共用備品の紹介(自治会防災グループからの防災ニュース)
・ごみ出しマナーの啓蒙

2020年11月号の「わが家のペット自慢」コーナー。
住民のペットを紹介すると共に、マンションのペット規定を掲載し、規定のリマインドにもなっています。(画像提供/ブラウシア管理組合法人)
2021年5月号では、IT委員会メンバーが理事会で使用しているストレージが故障したときの奮闘記を掲載。「Blausea NEWS」は、広報グループ以外の理事会の各グループ、委員会が記事を積極的に提供しており、日々の理事会活動が理解できるようになっています。
(画像提供/ブラウシア管理組合法人)

ちなみに2020年11月号8ページ、2020年12月号20ページ、2021年1月/2月合併号32ページ、2021年3月号28ページ。写真も多用されていて、読みやすい配慮もなされています。マンションの広報誌でこのボリュームはなかなかできないことです!

井上リーダー
今期の「Blausea NEWS」のコンセプトは「もっと知ろうよ、ブラウシア」で、知りたい記事を中心に構成することにしました。たとえば、近郊のこと、マンション内のこと、生活のこと。東京駅での乗り換え案内や、どのスーパーマーケットがどんな品揃えかなど、知っていると便利で役立つ情報をどんどん盛り込んでいます。広報グループの我々も、編集者でありながら、読者として知りたいことを基本に考えています。

2021年8月号の「スーパーマーケットについて調べてみました」。
住民アンケートの結果から、おすすめのスーパーマーケットを調べるこの企画。おすすめポイントもわかりやすく記載されており、住民目線で有益な記事になってます。
(画像提供/ブラウシア管理組合法人)
2021年3月号掲載の「ブラウシア近隣 プチ散歩」では、近隣の散歩スポットを紹介。
ステイホームで運動不足になりがちな住民にとってもありがたい情報ですね。
(画像提供/ブラウシア管理組合法人)

しかし毎月数10ページにも及ぶ広報誌を制作するのは大変なことです。カラーコピーして全住民に配付するというのも予算が必要です。広報グループではどのように運営体制を整えているのでしょうか?

高橋さん
「Blausea NEWS」は、年度予算をとって運営しています。去年までは8ページでしたが、今期(16期)からはページ数の制限を設けていません。A4判型ですが、A3袋綴じ・両面印刷で安価な印刷業者を選び、印刷コストを抑える工夫もしています。理事の皆さんも協力的で、記事を寄稿してくださっています。「Blausea NEWS」についてアンケートをとってみたら、「全部・一部読んでいる」という回答が98%、「マンション生活に役立っている」という回答が79%でした。評価も高く、楽しみにしてもらっているようです。

広報グループの毎月の編集会議では、みんなでアイデアを出し合い、内容と書き手を決めます。ページ数の増加も、最初は大変だと思ったそうですが、実は「8ページも20数ページも、労力としては変わらない」ことがわかりました。さすが!

また、デジタル時代にあえて冊子で発行する理由は、「冊子になることで書き手のモチベーションになる」ということもあります。確かにPDFデータで配付だと、きちんと目を通してもらえないかもしれません(ただし過去の「Blausea NEWS」はWEBでも閲覧可能なかたちにしています)。また「ひとつのものをみんなで一緒につくることで、チームの結束感につながっている」と言います。

2020年12月号に掲載の「ペットボトルリサイクル時の確認のお願い」。
ごみ出しのルールが、写真入りできめ細かく説明されていると共に、分別回収がどんな風に役立っているのかという説明にも誌面の多くを割いているのがいいですね。
(画像提供/ブラウシア管理組合法人)

新納理事長
もちろん読んで楽しいことは必要ですが、管理組合からの情報も積極的に発信していきます。
ペットボトルごみの出し方にしても、正しい出し方を知らないから誤った出し方をしている人も多いのだと思います。そこで、誤った出し方については写真入りで紹介して、協力を扇ぎました。

楽しい情報がある一方で、管理組合からの情報も丁寧に発信していくというのが、ブラウシアスタイルの編集方針なのですね。個人的には「うちのマンションにも、こんな広報誌がほしい!」と思いました。

●広がる!大学生の卒業論文テーマにもなった植栽活動

「2018年度千葉市都市文化賞 景観まちづくり部門最優秀賞」を受賞したブラウシアの植栽。
写真は、目隠しを兼ねた街路沿いの生け垣です。四季折々の豊かな樹種による緑のベルトを、住民の手で植え替えました。(写真提供/ブラウシア管理組合法人)

ブラウシア管理組合は、マンション内のみならず外部への情報発信にも積極的です。

ブラウシアでは「植栽5ヵ年計画」を立案して、住民が一丸となって段階的に植栽をつくりあげました。その活動は、テレビを始めとしたメディアでの紹介や「千葉市都市文化賞」の受賞など、多方面で高く評価されています。

さらにその「植栽5ヵ年計画」の活動については、千葉大学建築学科の尾山ななみさんが、2020年度の卒業論文テーマとして研究し、「大規模集合住宅における住民主体の植栽改修に関する研究―千葉市のブラウシアを対象としてー」を書き上げるまでに至りました。

尾山さん
マンションの植栽は、これまでは必要最低限のもので十分だと、あまり重要視されてきませんでした。しかしブラウシアさんでは、当初問題があった植栽に対して、住民が危機意識を持って立ち上がり、住民みんなで「5ヵ年計画」を立案・実行されました。管理組合や住民が、自主的に管理に関わっていくという、他マンションにはないめずらしい事例で、非常に興味深く取り組むことができました。指導教官の松浦健治郎准教授にも評価していただき、卒業論文として完成することができました。管理組合の皆様にも、資料提供やヒアリング調査で、きめ細かな協力をいただき、ありがとうございました。

井上リーダー(広報委員会)
「5ヵ年植栽計画」を、アカデミックな視点で研究していただき、住民としてもありがたいと思いました。広報委員会も全面的に協力しました。植栽は、住民にとっては心を豊かにするプラスアルファの存在であり、外部の方から見ればマンションの印象を左右する存在です。まだまだ重要視されていないようですが、資産価値を向上するには植栽は重要なものだと思います。

●広がる!他マンションとのオンライン交流

ブラウシア管理組合がいち早く取り入れたオンライン併用理事会の様子。
一部有志でさまざまなツールを試した上で、オンライン理事会のシステムを整えました。

ブラウシア管理組合が活用しているオンライン会議ツールは、毎月の理事会活動や役員同士のコミュニケーションのみならず、他マンションとの交流にも広がっています。これもコロナ禍で生まれた広がりですね。

新納理事長
オンライン会議が日常的になったことで、東京や大阪のマンションの管理組合の方々とも、気軽にZoomで交流するようになりました。これまでも、他のマンションの管理組合の方々がブラウシアへ見学に来られることはありましたし、その度に理事とオブザーバーで歓迎してきました。しかし、遠方のマンションの方々だとなかなか千葉まで来るのは大変でしょう。距離の隔たりも関係なく、気軽につながるようになったのも、この時代ならではの広がりですね。

ブラウシア管理組合が、広報誌「Brausea NEWS」の充実をはじめ、マンション内外へ向けての広報活動に積極的に取り組んでいるのは、2つの理由があります。

①住民に活動を伝えたい!〜モチベーションと愛着
ひとつは、管理組合や委員会ががんばっていることを知らない住民にも、活動の意義や内容を伝えること。それは担当した人のモチベーションにもなります。また、活動を知ることで住民も、自分のマンションに愛着が湧きます。

②外部にも伝えたい!〜ブランティングの確立
マンションの活動を積極的に外に向かって伝えることで、メディア取材や他マンションからの注目、また今回のように大学生の論文テーマになるなど、多角的に発展していきます。また、第三者からの評価を受けることが、マンションのブランディングにもつながっています。

マンション管理組合は、コミュニティの中のことは、あまり積極的に発信しない傾向にありましたが、これからの時代のマンションは、ブラウシア管理組合法人のように、内外に向けてのオープンな情報共有で、資産価値を高めていくのではないでしょうか?
そのためにも、今後はマンションの広報活動が重要な存在になっていく気がしました。

ブラウシア管理組合法人
千葉市中央区にある、2005年竣工、地上20階・地下1階建、総戸数438戸の大規模マンション。活発なコミュニティ活動や先進的な取り組みがテレビや雑誌で紹介されるなど、注目のマンション。

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