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アーセナルFCの旧スタジアムがマンションに!①「伝説を生んだスタジアムがマンションになった理由とは?」

イギリスを代表するサッカークラブ「アーセナルFC」。そのホームグラウンドとして100年近く使われてきたサッカー場が、マンションに生まれ変わったという。はたしてどんなマンションなのだろう。現地からレポートをお届けしよう。
※この記事は、2012年に制作したものです。


「ふるいもの=良いもの」という価値観が、特別なマンションを生んだ

日本でマンションといえば、新築の機能的な建物というイメージが強いだろう。マンションでの生活が一般化する中で、以前に建てられた年代物の物件も数多くなってきた。それでも分譲マンションといえば、どうしても一から創りあげた新しい建物での生活を思い浮かべるのが普通ではないだろうか。

一方、ヨーロッパなどでは何百年にもわたって“集合住宅”に暮らしてきたこともあり、「旧いもの=良いもの」という価値観が強い。そのため、築200年から300年の建物の一室を手に入れると、石造りの外観はそのままにして内装をすべて入れ替えるような大改装をほどこすことが少なくない。長い年月を刻んだ大きな木製のドアをくぐると、そこに現れるのは「ITフル装備、オール電化の明るくて快適な住まい」ということがよく見られる。とはいえ、欧米においても、建物全体が総合的にリノベーションされるという例はめずらしい。そうした中、イギリスで大きな話題となり、大成功を収めているマンションがある。それはサッカーのスタジアムを大胆にリノベーションしたものであった。

緑あふれるセンターガーデンから眺めるマンション棟。
庭に面した大きなウィンドーからは陽光にあふれる室内が想像できる。(c)Arsenal FC

そのマンションは、イギリスの首都ロンドンにある。イギリスといえば、各都市が有名クラブチームを抱えるサッカーの本場。ロンドンにも10チーム以上のプロサッカークラブがひしめいている。その中でも「アーセナルFC」と「チェルシーFC」の2チームが人気を集めている。話題のマンションは、100年近くにわたって「ハイバリー・スタジアム」と呼び親しまれてきた、アーセナルFCのホームピッチを改装したものだ。

伝説を生んだスタジアムがマンションになった理由とは?

2010年、「ハイバリー・スタジアム」は、「ハイバリー・スクエア」という名前のマンションに生まれ変わった。その経緯について、「ハイバリー・スクエア」の物件を扱うスタジアム・レジデンシャル社のゴラン・シモノヴスキーさんに話をうかがった。

シモノヴスキーさん:「『ハイバリー・スタジアム』はアーセナルFCの歴史そのものです。アーセナルFCは1913年から2006年まで、じつに93年間もここをホームにしていました。その間、ここでは数々の名選手のプレーと、いくつもの伝説が生まれました。ところが、一方では老朽化が進んでいましたし、収容人員が38,500程度で、現代の他のスタジアムに比べると、だいぶ小さいものだったのです。こうした理由から、アーセナルFCはハイバリーから500mほどのところに、新しい『エミレーツ・スタジアム』を作りました。ホーム・スタジアムはそちらに移りましたが、クラブ側ではハイバリーを捨て去ることはできなかったのです」

「ハイバリー・スクエア」南棟に店舗を構える
スタジアム・レジデンシャル社のゴラン・シモノヴスキーさん。

シモノヴスキーさん:「クラブ側としても、すぐ取り壊して他のものにしてしまうのには、大いに迷いがあったのです。当然ですよね。どうにかして、この古いスタジアムの“魂”を残せないものかと、頭を悩ませていたのです」

アーセナルファンで埋めつくされた、かつてのハイバリー・スタジアムのメインスタンド。(c)Arsenal FC

シモノヴスキーさん:「そんなときに持ち込まれた企画が、スタジアムとしての形を生かしたまま、マンションとして再生させるというものでした。“旧スタジアムの雰囲気を活かしつつ”という点は、まさしくクラブ関係者の想いそのものでしたから、誰もがそれに賛同しました」

数限りなく繰り広げられた名勝負とスタープレイヤーたちの活躍の場だったピッチ。(c)Arsenal FC

こうして、スタジアムをマンションにするという一大プロジェクトが始まった。その工事は大規模なものだったという。工事を担当したのはサー・ロバート・マクアルパイン社。エデン・プロジェクト(※)などにも参加した、設計力と技術に優れた大手建設会社だ。

(※)人間が植物や天然資源といかに関わり、依存しているかを紹介するために作られた庭園と教育センター。イギリス南西端コーンウォールに建てられた。

シモノヴスキーさん:「サッカーファンにとって、『ハイバリー・スタジアム』といえば東西のファサード(外壁)、というほど印象深いものです。ですから、東西のファサードは元のまま利用しました。部屋のスペースは、壁の内側のスタンドがあった部分に設けたんです」」

アーセナルFCの栄光を刻む東西スタンドの外壁を残して大改装中のハイバリー・スタジアム。

シモノヴスキーさん: 「ピッチだったところの地下には、475台収容のパーキングスペースなどを用意し、地上は半公開のセンターガーデンになっています。ここには季節の植物が植えられています。ガーデンは東西南北4つのスタンドに囲まれています。現在、スタンドは部屋になっていますから、どの部屋からもガーデンを見ることができ、自然の雰囲気が楽しめるようになっています。最初、このセンターガーデンは地域住民に開かれたパブリックスペースにしたいという計画がありました。しかし、セキュリティの観点から24時間開放という訳にはいかず、結局、日中ゲートが開いているときは誰でもご自由に、という形になりました。もちろんマンション住民の方はいつでも利用可能ですよ」

写真上はかつての「ハイバリー・スタジアム」。
下は改装して生まれ変わった「ハイバリー・スクエア」。


「アーセナル・スタジアム」の名称が刻まれた重厚なファザード(壁面)。
その向こう側には、快適な住空間が広がっている。(c)Arsenal FC


「ハイバリー・スクエア」の平面図。生まれ変わったかつてのピッチを囲むように、
東西南北のマンション棟が配置されている。

こうして2010年に旧ハイバリー・スタジアムはマンションに生まれ変わった。完成した「ハイバリー・スクエア」は分譲マンションとして販売され、たちまち完売したそうだ。その後も、このマンションの人気は高く、転売希望の部屋や賃貸物件などが出ると、現在でも引き合いが絶えないという。


Reported byシャルバーグ八千代
取材協力: アーセナルFC http://www.arsenal.com/
スタジアム・レジデンシャル http://www.stadiumresidential.com
※不動産価格などの情報は、取材時のものです。

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