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【第三回】住人が語る“沢田マンション”の魅力

現在、沢田マンションには40年近く住み続ける人がいる一方、若手の入居者も増えている。住人や建築ファンから“沢マン”の愛称で親しまれるこのマンション、実際に住む人から見るとどのような場所なのか。若手の住人&元住人にお集まりいただき、内部から見た沢マンの魅力をざっくばらんに伺いました。

※本記事は、2012年にマンションラボに掲載したものを一部編集して再掲載するものです。本記事の写真、文章は当時の情報のまま掲載しております。

実際に住んでいると
さまざまなハプニングも

唯一無二のセルフビルド建築として、専門家はもとより建築ファンからも熱い視線を集める沢田マンション。建物自体に興味を持つのはわかりますが、住もうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

「地元ではね、おかしなマンションとして有名なんですよ」。そう話すのは、岡本さん。1階のギャラリーを主宰し、ネットで応募するマンション見学ツアーの案内人も務める自治会長的な存在です。「蛇口をひねると塩水が出るとか、いろいろな噂には事欠きませんね」。沢マンに住むことになったのは、ここで開催された飲み会に参加したのがきっかけだとか。「実際に来てみたら、とても面白い場所だったんです。すっかり気に入って大家さんに会いに行ったら、これがまた気っぷのいい人で(笑)」。

今回マンションの内部を案内してくれた岡本さん。ありがとうございました!

地元での評判は、建築ファンが持つイメージとだいぶかけ離れている模様。近所に実家がある元住民の森さんは「お化けマンションって呼ばれているんです」と言う。「夏になると、子どもたちが肝試しに来ますからね」。

そんな話はつゆ知らず、入居したのが四方さん。「僕は本で沢田マンションのことを知り、憧れがありました。神戸で働いていたんですけれど、彼女が高知の人で。仕事を辞め、高知へ行くことになったんですが、住むなら沢マン!と決めていたんです」。

近くには大型スーパーや家電量販店があり、生活環境はとてもいい。では、実際に住んでみた沢マンは、どうだったのでしょうか。

「ハプニングは、数え切れないほどありますね」と岡本さん。例えば、雨漏りがする。巨大なムカデがいた。天井が落ちてきた! 第一期工事から40年、常にメンテナンスをしているとはいえ、不具合も出てきます。「でも、そんなハプニングがコミュニティを呼ぶんです」。生活の中で困ったことが起こると、先輩の居住者に相談する。
そこで解決法を教わったり、一緒に対策を練ったり。そうして、住人同士の絆が深まっていくと言います。「もちろん、このマンションが合わずにすぐ出て行ってしまう人もいるんです。今住んでいるのは、多少の不便さを逆に楽しめる人が多いですね」。

ベランダ部分に隣家との仕切りがなく、廊下同様に行き来できるのが沢田マンションの特徴のひとつ。「よく長屋的なマンションと言われますが、ちゃんとプライバシーは守れるんです。同じ部屋を共有するシェアハウスとは違う。だから、隣人とも無理して付き合う必要はないんですね。その距離感がいい」と岡本さんは言います。「以前、下の部屋から大きな音や声が聞こえてきまして。すると、みんな家から出てきて心配するんですよ」と四方さん。都会のマンションであれば、無視を決め込むか、苦情混じりに警察へ通報するか。ところが、沢マンでは住民同士が心配し合う。風通しの良い構造が、助け合いの空気を自然に醸成するのかもしれません。

住民参加の行事では
ユニークなシステムも

集合住宅に住む上で、何か決まり事はあるのでしょうか。「そうですね、大家さんが法律ですね」と岡本さんは笑います。住人がなんでもできるマンション、という噂もあるようですが、そんなことはありません。室内を改装したければ、やはり大家さんの許可は必要。1階にあるギャラリーも、岡本さんが大家さんと交渉の上、生まれたものです。

沢田マンションのギャラリー「sawaman gallery room38」。

また、全住民が参加する行事としては、年1回の防災訓練と大掃除があるそう。この大掃除がユニークなシステムで、欠席者は500円を支払います。そのお金は参加者のお弁当代に当てられるのだとか。たとえ欠席しても後ろめたさが残らない、素敵なアイデアです。

住民同士の交流の場として、何年かおきにイベントも開催されます。昨年実施したのが「SAWA SONIC 2011」。地下から屋上までを開放し、ライブやトークショー、縁日などを展開しました。「集合住宅ですから、すべての住民が仲良しというわけではありません。だから、あくまでも参加は自由。それでも、イベントをきっかけに会話が始まることがありましたね」と岡本さん。参加者は、なんと1400人。マンション内だけでなく、近隣の住民との交流も大いに楽しめたようです。

お話を聞いていると、一般的なマンションとは異なる点が多いことに気づきます。建物自体だけでなく、居住スタイルも独創的。部屋の間取りはすべて異なるので、岡本さんは沢マン内転居を何度か繰り返しているそう。結婚を機にマンションを出た森さんは「懐かしくてつい遊びに来てしまう」と言います。「ここから出て行ったら、寂しくてやっていける気がしない」とは四方さん。住民が、最大の沢マンファンなのかもしれません。

興味を持たれた方は、一度訪れてみてはいかがでしょうか。

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